2017年09月22日

「真人生の探求」(中村天風)

   9月22日(金)  神経反射作用の調節法



 なおこの肛門を締める効果および応用法は、かなり沢山あるので、逐次述べること
とする。

 次は、下腹部に力を充実すると、一体どういう効果があるかというと、これは大抵
の人が、理論的消息はとにかく、下腹に力をいれるのはいいことだということは、誰
でも知っているようである。即ち腹を練れとか、腹に気を落ちつけよとか「あの人は
腹の出来て居る人だ」とかいう言葉は、昔から沢山ある。武術の方にも、「技より腹
を造れ」 という戒めがある。然し、これに関する理論的知識のない人は、ただ単に
腹に力を入れさえすれば、それでよいように思って、やたらと息張りさえすればよい
と思うが、それは、往々効果少なく損失多い結果を招来するから、注意しなければな
らない。

 勿論、下腹部に力を充実せしめれば、第一に腹筋神経を通じて、腹腔内の各神経叢
を確保し、その上脊髄部の周囲に散在する神経叢もまた確保されるに相違ない。

 然し、茲に特に注意すべき重要な問題は、下腹に力を充実せしめる時、必ず肛門を
締めないと、往々内臓を下垂せしめるような結果を作る怖れがあるのである。
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2017年09月21日

「真人生の探求」(中村天風)

   9月21日(木)  神経反射作用の調節法



 これに就いて、興味のある参考談がある。昔、東海道桑名の渡海船が、途中で大時
化に遇って難破し、乗り合いの殆ど全部が溺死した。そこで、その漂流して来た溺死
人を、岸辺の砂浜の上に並べて、桑名の浜役人が一々検視を行った処、その中に一人
の僧体のものが、どう見ても死相になっていないので「この沙門は死んでおらぬよう
だ」 というと「いいえもう既に息絶えております。」 と下役人がいったが、検視
の役人は相当心得のある男と見えて「いや真死でなく仮死らしい。とにかくその者の
肛門を調べて見よ。必ず締まっていると思うから」 というので、下役も不審に思っ
て調べて見ると、上役のいったとおり、他の溺死体と異なり、肛門が堅固に締まって
いたので「仰せのとおり締まっております」 というと「そうであろう-----では手
当をいたして見よ。蘇生いたすから」 というので、下役が型のとおり水死人に施す
手当を行うと、やがてこの僧体が息を吹き返した。そこで検視の役人が「御坊は何れ
の沙門か存ぜぬが、余程心得のある方と見受ける」 というと、かの僧は「どういた
しまして、愚僧は未だ修業中の未熟者に御座ります」 というから、上役が「いや
中々そうで御座らぬ。大事に臨んで肛門を締められるなどは未熟輩の為さぬところ、
誠に感服いたした」 というと「肛門を締めましたのがさほど御褒めに預かります
か」 と不思議そうに問い返すから「数多くの溺死人悉く助かり申さず。その中で御
坊だけは、肛門の締まりおりしため蘇生されたのである」 というと、かの僧いと感
慨深げの面持ちで「作用で御座りますか。さてさて愚僧のお師匠はえらい御方で御座
ります、実は愚僧は、目下京都に御滞在中の白隠禅師の下に使われております白翁と
申す者で、この度所用のため郷里に立ち帰る途中、この災難に遭いましたのですが、
京を発足いたします時、師の御坊が、旅は世慣れぬものの一入気をつけねばならぬも
の。とりわけ何かの大事に出会いし時は、何を措いても、肛門だけは緩めるでないと
仰せになりました。その時は格別何とも思わず出発いたしましたが、桑名の渡海船に
乗りまして間もなく大時化で、船頭衆も、もうとても駄目だから乗り合いの皆さん覚
悟して下されとのこととて、その時ふと出発の際の師の御坊の言葉を思い出し、どう
せ助からぬものなら、せめてこの一期の大事に、何はともあれ、師の御坊の仰せのと
おり、肛門だけを締めようと、船から浪間へ振り落とされる刹那までも、その事のみ
を一生懸命行念いたし、そのまま気を失いましたのですが------」 と物語るを、黙
然として聞いていた役人は『流石は日本一の高僧』 よと、いたく感動したという話
がある。

 勿論、その当時の識者が、神経叢と肛門との関係を、学術的に理解していたかどう
かは疑問だが、然し、いわゆる実際から会得していたという尊い事実的知識であると
思う。
posted by 林田カイロプラクティック院 at 05:51| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月17日

「真人生の探求」(中村天風)

   9月17日(日)  神経反射作用の調節法



 よく、極度の刺激や衝動を受けて死ぬ人がある。即ち強烈な打撃を受けたとか、ま
たは極度の驚きのために------それは、その刹那無限に活力を失うからの結果なの
で、更に普通、病の場合などを考えても、この消息はよく分る。病には、一寸した生
活の失錯ですぐになるが、これを回復せしめるのには、相当の時間がかかる、という
事例だけで考えても、活力は、出来るだけ失わないように注意しなければならないも
のであるが、特に神経過敏の人は、より一層失う方の分量が多く、受け入れるのには
有限量を、然も相当の時間を費やさなければ得られぬという有り難くない傾向が顕著
なのである。

 前記の肉体処置の方法は、この重要な神経叢の、こうした場合に於ける不測の動乱
を鎮圧確保して、できるだけその安定を計り、活力の放出量を最小限度に、食い止め
得るのである。もっと詳細にいえば、先ず肛門を締めるとどうなるかというと、脊髄
の末端及びその周囲に散在する神経叢の異常動乱を鎮圧する。

 然もこの肛門を締めることは、古来相当重視されていた形跡がある。古禅ではこれ
を「止気の法」 と称し、気の逃げ失せるを防ぐ法として、怖ろしいことや、驚くこ
とがあった時に行うべしと説かれている。
posted by 林田カイロプラクティック院 at 08:09| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする