多くいうまでもなく、人間は食せざれば死すで、従って生きんがためには当然食せ
ずんばあるべからずではあるが、さりとて只、食いさえすれば完全に生きられるかと
いうに、事実は決してそうでなく、要約すれば、真健康建設に対する不合理的な食餌
を摂取すれば、生きんがために食する食物が、反対に死せんがために食すという、笑
えぬ滑稽を招来するという結果を作為する。
従って、かりにも健康生活を満喫せんと欲する者は、常に、如何なるものを食する
ことが、正当なる合理食餌であるかということを、正しく理解し、その理解を基盤と
して、日常の食餌を摂取すべきである。
わざわいは口より出で、病は口より入る。では、如何なるものを食すべきかという
に、第一に強調せねばならぬことは、無病長寿を現実化せんには、平素でき得る限り
植物性食餌を摂取することを、食生活の重点とすべしという事柄である。
動物性食餌を摂取するとその齎(もたら)す効果よりは、反対に受ける害毒の方が
甚だしいからである。
第一に「バクテリヤ」に対する抵抗力を弱くし、やたらと感冒やその他伝染性の病
に冒されやすくなる。蛋白質が消化分解される際に生ずる副産物に、尿酸、という特
殊のものがあり、これが体内に残留停滞するという事実がある。
尿酸過剰に陥ると、血液が極度に酸性化し、健康保持のため必須とする血液のアル
カリ性の反対である、アジドージス、という不純なものになり、そのため各種の病的
刺激に対する抵抗力を減退し、その結果病弱体となったり、または早死もしくは早老
をするという好ましからぬ事実を作為するに至る。
健康で長寿を得るには動物性食餌を可及的少なく食すか、さもなくんば絶対に食せ
ぬ方が、共通的に良い。
動物的食餌を摂取するとたしかに何となく活気が付いたように感じるのは事実であ
る。しかしそれは、極論すれば、ただ一時的に生ずる第一次的反応興奮現象なので、
やがてその興奮作用が消滅すると、反対に機能疲労が招来される。