それ故に、特に理智階級者は、何よりも現実に人生に必要とされるこの事柄を、正
当に理解するという事を先決にしないと、かえってその理智のために徒に人生を誤
り、或は不幸に陥る場合を縷々招来するべく余儀なくされる事は寧ろ必然だといわね
ばならない。
川柳にも「あの人は物識りだけに不幸せ」というのがあるが、けだし味わうべきも
のが多分にある。
さてそこで然らば心というものににはどんな区別が存在しているかというと、心に
はその性状と活動の状態から大別すると、下の二つのものがある。
即ち
肉体生命に属する心
と
精神生命に属する心
そして、肉体生命に属する心の方は、更にこれを細分すると、その内容に「物質
心」「植物心」「本能心」という三つのものが存在する。
又一方精神生命に属する心には、「理性心」「霊性心」という二つのものが、その
内容をなしている。
それ故に、複雑な各種の心理現象というものも、これに集約すれば、前記の心の何
れかを根本としてそれが意識領域に発動した場合の現象をいうのである。
そして肉体生命に属する心の中で、前述の「物質心」と「植物心」は、普通の場合
他の心のように単独に意識領域の表面に現出活動しない特殊の心なのである。正確に
言えばこれらの心は肉体生命の内部で、その肉体生命営為のために必要とする方便を
行っているものなので、従っていわゆる一般にいうところの心理現象なるものを直接
的に作為する性質のものでなく、常に本能心と結合して作用するものである。この故
にこれらの心に関する説明は、特に必要の場合にこれを要約的に記述する事とし、先
ず順序として理解を必要とする本能心というものについて説明する事とする。