2018年05月28日

「研心抄」(中村天風)

   5月28日(月)  第二節 官能啓発の実際修練法



 先ず、最初聴覚作用の習練として懐中時計を音の辛うじて聞こえる限度まで耳元か
ら離す。そしてその限度で音を十分完全に聞き得るようになったら、又僅かづつ距離
を遠くする。勿論何度も言った通り決して焦ってはならない。総じてこの種習練には
とりわけて忍耐が必要である。そしてこういう練習は一時に時間を長く行うよりは短
時間で回数を度々多くする方が効果的である。

 次は触覚の習練であるが、夜間なら電灯を消して闇黒の中で、昼間なら手拭いで目
隠しをして十数個の小物品を他の人に不規則に置かせ、それを手探りで触れて見てこ
れは何という事を言い当てる習練をする。この場合に用いる物品は平素余り手に触れ
ないようなものがよい。たとえば男子は婦人用のコンパクトとか口紅とかというよう
なものを用い、婦人には男子用のものを用いる方が良い。

 第三に視覚の習練であるが、これは先ず後ろ向きに座って、他の人に十数個の物品
(どんなものでもよい)を雑然と不規則に散在させ、よしっ!という掛け声とともに
クルリと向きを変えてその品物を一瞥すると素早く後ろ向きになって、眼に見た其の
儘の品を何と何と名にという風にいう。

 いずれにしても以上の三感覚作用を前述のような適宜の方法を以て習練すれば、他
の嗅覚や味覚の作用も、特別に習練せずとも次第にその側面誘導を受けて適確に優秀
になるものである。そしてこれ等の習練にも、やはり有意注意を充分完全に応用すべ
きことは敢て贅言を要せぬ事であるから、すべてを真剣な気持ちで習練すべしであ
る。要約すれば官能の現実啓発は有意注意力と密接な相対関係の下にある事は忘れて
ならぬ肝要な事である。
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2018年05月21日

「研心抄」(中村天風)

   5月21日(月)  小満(光熱ともに旺盛となり、陽気天地に満ちるという意
味で小満という)



 第一節  官能の啓発



 それでは第一の感応の啓発とはどういうことかといえば、これを分かり易くいう
と、五官の感覚機能を正確優秀に作用せしめるようにこれを訓練誘導する事である。

  そして特に注意すべき事は、外界の各種印象を五官が先ずこれを受けいれる際そ
れを入念に吟味し又適当に取捨分別して心に取り次ぐ習性をつくらなければならぬと
いう事である。
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2018年05月14日

「研心抄」(中村天風)

   5月14日(月)  第四章 認識力とその養成に就いて

        第一節 官能の啓発



 この章に於いては更に人間の精神機能の中に存在する認識力とその養成という事を
説述し、諸君の心的修練に資供することとする。

 そこで先ず順序として知得すべき事は、認識力の養成という事と自己統御という事
とは、一体どんな関係があるかということである。これを簡単に説明すれば、認識力
を適当に涵養しないと、心の固有する知覚作用が正確を失い、その当然の帰結として
正しい自覚とか、或は悟りとか又は第六感というような、いわゆる高級意識に属する
精神作用が低調になり、延いては完全な自己統御ということが充分よく行えなくなる
という、人生に対する重大な事実と理由とが生ずるからである。

 ところが実際に則して現代人を見るに、案外にもこの重大な人生消息を余りに軽く
視ているという事実傾向が多分にある。その証拠には認識力の養成という事を往々等
閑に付して、只徒に智識の詰め込みにのみ熱中している。そしてその結果智識は割合
に含蓄されているにも拘わらず、諸事万事に対して認識の不全や不足を敢てなし、し
ばしば失策や失敗をせずともよいのに招来して物好きにも人生苦をこうむって悩んで
いる。然しこのような事態では、如何に学問を研究し智識の分量を増大しても、所詮
は学べばいよいよ苦しみ、究ればますます迷うという現象の方が多分に発生し、本当
の人生幸福というものを味得することは出来ない。

 こういう事実から考量しても、認識力の涵養ということは、ひろき意味に於いて忽
緒に付し得ない重要な人生事業の一つだと言い得る。それではこの重要な認識力の正
当な養成は、一体どうすれば最も正確にその目的を達し得るかというに、

 第一に「官能の啓発」

 第二に「精神内容の浄化と整理」

という二要項を正当に解決することである。
posted by 林田カイロプラクティック院 at 05:08| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする