ところが、このように、微塵犯すことの許されない真理と事実が、その生命に厳格
な状態で存在しているのにもかかわらず、ともすると、生命を心か体かの一方的に処
置することに依って生命の全体を正当に解決し得るもののように考える人の多いの
は、洵に遺憾の事実だといわなければならない。特に、この傾向が、人間の生命を強
化することを目的とする健康法の中に相当多いのは、大いに考慮を要することである
と断言したい。
このことは、議論でなく、目に見える事実で立証されている。即ち、健康法にはお
おむね肉体本位、肉体偏重のものが多い。これを大別して見るとおよそ下の数種に分
類される。
@ 筋肉の鍛錬を本位とするもの、
A 皮膚の生活機能を強固にすることを本位とするもの、
B 呼吸器の強さを増すことを本位とするもの、
C 消火器の機能増進を本位とするもの、等々
そして、第一の筋肉鍛錬を本位とするものには、体操または強健術などがある。こ
れらは、直接的に鍛錬する方法であるが、その外に柔道や剣道やその他一般スポーツ
の如く、それを行うことに依り間接的に鍛錬されるものがある。
第二の皮膚の生活機能を強固にすることを本位とするものには、水浴、冷水摩擦、
冷風浴、空気浴日光浴等がある。
第三の呼吸器の強さを増すことを本位とするものは、主として丹田呼吸法とか、腹
式調和呼吸法とか、胎息法とか名づけられる諸種類があるが、何れも深呼吸様式の応
用されたものが多い。