が然し、特に此処に深く考えなければぬことは、普通の場合お互いがそれぞれの人
生に活きる時、その人の人生修養が特別に徹底もしくは完成されていない限りは、人
生事情の種々相のために誘引されて、ともすると、その生活の状態が知らず識らずの
間に、前述の生活目標から離脱して営まれることが多く、言い換えると、いつの間に
か、自己本位に堕した生活になり易いという問題が、事実に於いて存在するのであ
る。すると、潜勢力の発現もまた自然とこのため阻止されてしまうという結果が相対
関係で発生するということになる。
であるから、かりにも、人間として生まれがいのある人生を作るには、一方恒に自
分の生活目標を、本来使命の遂行という点から離れないように注意すると同時に、自
己の生命に実在する潜勢力の発現を、現実に期成する方法手段の実行ということを、
怠ることなく専念努力しなければならないのである。否、事実! そうしなければ、
決して人間として享受し得る人生の幸福というものは、これを絶対に我がものにする
ことは出来ないといっても、決して過言ではないのである。
実際、こうした事柄を考えると、潜勢力の発現を期成する方法の会得と実行という
ことは断然ゆるがせにすることの出来ない、重大な人生問題だというべきである。