暗示について心理学はこう定義している。「暗示とは、人の精神に無条件に同化感
化の力を働きかける事実現象なり」 と。そして、こうした働きを行う暗示となるも
のは、凡そ下の四種類に分類される。
@ 言語
A 文字
B 行動
C 現象、 等
厳密にいえば,宇宙間のありとあらゆる事物現象は、悉く人の心に同化もしくは感
化を与える暗示となるといえる。即ち、人間社会の習慣も風俗も乃至は教育も何れも
暗示の連続的作用にほかならないのである。もっと卑近な例を挙げれば、多くの人々
が流行を追うことや、何かの出来事に付和雷同する群集心理の動きや、更に、映画
や、演劇や、講談、浪花節等に感動するようなことも、せんじ詰めると皆、暗示に同
化感化するためなのである。この見地からすれば、人はだれでも、暗示の世界の中に
活きているといって差し支えないのである。
そして暗示の中には、積極的のものと、消極的のものとあって、人の精神はだれで
もこの暗示というものに、感化同化する作用がある。これ即ち、暗示の感受作用とい
うのである。