これは、事実に徴して見るとすぐ判明する消息で、たとえば、心の弱い神経過敏の
人に、積極的の生活法や、養生法が、容易に採用されないのもこのためで、そういう
種類の人に限って、自分の様な先天的に弱い体のものは、かえって積極的の方法は、
障るとも効果はないというように、頭から拒否なり否定を施してしまう。
また更に、不良性に傾いている人などが、先輩や父兄の善良な忠告を耳にも入れ
ず、空吹く風と聞き流して鼻の先で笑って受け付けないというのも、また前記の理由
に依るものなのである。ところが、自己暗示の場合には、それが特に自己を改善しよ
うとか、向上せしめようとかいう正当欲求から施される時には、その暗示感受作用の
状態から受ける影響は、他面暗示と比較して極めて少々なのである。
そこで私はこの精神生命内に実在する現実傾向を基盤として、更に一層に暗示の透
徹力を現実に深刻にし得る特殊の自己暗示誘導法を創意し、観念要素の更改を現実に
することに成功した。