この方法も極めて簡単な手続きで、然も効果率を顕著に有する方法である。
但しこの方法を行うには、一個の鏡を用いる。その要領は、鏡に映る自己の顔面に
対し、自己の欲する積極精神状態を、命令的言語を用いて、たとえば、「信念が強く
なる!」 とか、「神経過敏でなくなる!」 とか、或は「もっと元気が出る!」
とかいうような言葉を、真剣な気分で発声するのである。
そこで特に必要な注意は、発声は特に大声である必要はなく、自分の耳に聞こえる
程度の「呟き声」 位の低声でよいので、要するにその気分が真剣であることが、欠
くべからざる条件なのである。
なお必要とすることは、その際一度に数多くの項目を命令しないこと、奏功を確実
にするためには、一回一事項に限ることと、それからこうして一度命令しだしたら、
その命令したことが自己の精神に具体化する迄、同一命令をその度毎に続行するこ
と、即ち、「信念が強くなる!」 と命令したとしたら、確実に信念が強くなったこ
とを自覚し得るまで、他の事項を命令しない方が極めて効果的なのである。
これは一名 Lindler System と呼ばれる方法で、心理学の国と呼
ばれたフランスでは、教育者が大いにこの方法を推奨している傾向があるが、彼らの
多くは、この方法を折ある毎に一日の中で何度でもよいから、鏡に対する度に行え
ば、行うにつれて効果が上がると主張している。勿論、その主張通り極めて自己改善
に効果の多い方法であるが、これを一層確実な効果のあるようにするには、特に初心
者には、この方法を夜今正に床の中に入ろうとする直前に行うことにするのである。
すると、昼間折ある毎に、度数多く行うよりも、遥かにその奏効率が高いことになる
のである。