これは、何事か思うにつけまた考える時に、現在自分の思っていること、考えてい
ることが、果たして積極的か、それとも消極的かということを、自己自身客観的に自
己の心的態度を観察批判することなのである。
このことは、かりにも観念を積極的に集中しようと欲するものには頗る重要な用意
なのである。多くの場合、大抵の人は、自己の心の前に現れた事物事象に対し、何の
分別するところなく、矢庭に慌てふためいて、取り組んでしまう傾向がありはしない
か? 従って、その時の自分の心の状態などを観察しようともしない。また時とする
と、今自分が怖れを感じているとか、悲しんでいるとか、或は怒っているとかという
ことを意識していながら、少しもそれを積極的の方面へ転換しようとさえしないとい
う頗る念の入った笑止の人さえある。
然し、それをそれでよいとしていたなら、いつ迄たっても、正しい自己啓発という
ことは出来るものではない。常に自己の心的態度を厳かに監視するという心組みで、
一切の事物事象に対応する時の、自己の心の中で行われる思考の状態を、果たしてこ
れでいいかどうかと、入念に考査しなければならない。