なおこの肛門を締める効果および応用法は、かなり沢山あるので、逐次述べること
とする。
次は、下腹部に力を充実すると、一体どういう効果があるかというと、これは大抵
の人が、理論的消息はとにかく、下腹に力をいれるのはいいことだということは、誰
でも知っているようである。即ち腹を練れとか、腹に気を落ちつけよとか「あの人は
腹の出来て居る人だ」とかいう言葉は、昔から沢山ある。武術の方にも、「技より腹
を造れ」 という戒めがある。然し、これに関する理論的知識のない人は、ただ単に
腹に力を入れさえすれば、それでよいように思って、やたらと息張りさえすればよい
と思うが、それは、往々効果少なく損失多い結果を招来するから、注意しなければな
らない。
勿論、下腹部に力を充実せしめれば、第一に腹筋神経を通じて、腹腔内の各神経叢
を確保し、その上脊髄部の周囲に散在する神経叢もまた確保されるに相違ない。
然し、茲に特に注意すべき重要な問題は、下腹に力を充実せしめる時、必ず肛門を
締めないと、往々内臓を下垂せしめるような結果を作る怖れがあるのである。