第六章 睡眠に関して
そもそも眠るということは、吾人の肉体生命確保の上から見て、食うことよりも大
切なものであると言える、それは現に、人生の少なくとも三分の一時間は、この睡眠
に必要とされるという簡単な然も現実の事実の上から考察してもそれが如何に大切な
ものかということが分明する。
絶食の場合、体重は相当減量するが、脳の重量は更に何の変化も招来しない。とこ
ろが睡眠の方が不足してくると体重よりも脳の重量が著しく減じて来て、その結果意
識も従って明瞭を欠きいわゆる朦朧状態になる。
如何なる状態で睡眠をとるのが衛生上合理的であるかというと、規則的に睡眠をと
るのではなく、その日その時の活力の消耗の程度に適合する、言い換えれば生命の要
求する時間を睡眠するのが、最も自然法則に順応する方法である。
第一に必要な事は、本当に眠くなってから就寝するようにすることである。次に、
睡眠時間は事情の許す限り、その日の精力の消耗程度に比例して適宜に加減する。
安眠を得る二三の注意。
1)昼間出来得るだけ、こまめに肉体筋肉を働かす事。
2)夕食後は食物を口に入れぬ事。
3)就床前の心の持ち方。=心痛、憤怒、煩悶、悲観のような消極的の
思考を断然心にもたせない。
睡眠という自然の与えてくれた精力復活の恵まれの時に、本当に親しむのには、落
ちついた楽々とのんびりとした気分が最も肝要なのである。