意志の力の発現と精神統一とは絶対不可分の条件の下にある。
意志は精神領域が整然としている場合にだけ、その本来の絶対性を働きかけ集中す
るものである。
本能的に発生する肉体感覚は勿論、その他各種の情緒であれ、はたまた理性心であ
れ、更に高級な霊性心であれ、苟も精神領域に発現するものは、悉くこれを客観視す
るという意識観念を習慣づけることである。
たとえば今までは腹が減ったとか、手足が痛むとか、発熱したとかというような感
覚的の事は勿論、或は怒り悲しみ憾み妬みというような感情情念が発生した場合、概
ね多くはそれを直ちに自己の体が痛むとか私は腹が立つとかと考えていたのを、今後
はそれを自己の生命の附属要具である心がそう感じるので、即ち自己(真我)にはそ
う言う事態が発生しているのではなく、空腹感であれ、痛覚感であれ、乃至は怒りで
あれ、悲しみであれ、一切精神領域に発生するものは、心がそれを感じるのである
と、丁度第三者の動静を看るようにすべての心的作用や心理現象を思量するという意
識観念を習慣づけるのである。