真健康の確立に対して住居ということもまた決して忽せにすることを許されぬ枢要
なる条件である。
住居というものは、人類の生活を保全するために、食物と相まって必須とされるも
のであることは敢て論を待たない、即ち、人類生命に対して頗る密接なる影響関係を
有しているものなのである。
住居は、只住めればよいというだけではいけない。如何なる家屋が理想的のものか
というと、
(A)空気の流通の良好なること
(B)日光のよく当たること
という二つの条件が具備されていることである。
空気の流通が何よりも枢要なものなのである。平素生活部分の大部分を過ごす居間
や書斎の如きはたとえ寒中と雖も、甚だしい雨降りや烈風の吹かぬ限りは時々戸障子
をその一部分を数分間でよい故、しばしば開放するという注意を実行すべきである。
特にその室を使用せぬ時は、その窓なり障子なりの一部分を開けておくか、さもなけ
れば、使用の直前に思い切って数分間全部を開放して新鮮な空気をいれてやることで
ある。
一体、多くの人は、風邪ひきの原因を冷えた空気に当たることのように思い込んで
いる傾きがあるが、この考え方はかなり間違っているのである。そもそも、感冒とい
うものは、第一に肉体の活力が減退して抵抗力が弱っているという事がその根本原因
なのである。
であるから、厳密に言えば肉体に活力が充満し抵抗力が旺盛であれば、寒い風や冷
たい空気に接触しても感冒にはかからないものなのである。
たとえ寒中室内にいる時と雖も、入念に空気の流通を良好にする注意を実行するこ
とが肝要なのである。
それから次は「室内に日光のよく当たるようにすること」である。というのはゴミ
やホコリの中に人体に有害なバクテリアやその他の細菌が混入しており、殆ど大抵の
バクテリアやその他の細菌は日光の力に敵すことが出来ない。かるが故に室内に出来
るだけ日光の光線の透射するようにすると、自然とバクテリアやその他の細菌が死滅
する率を多くするのである。