そして、本能階級者や理性階級者の人々が行うような、僅かな事に失望したり、些
細の事に落胆する事など断然なく、又無益な悲観や煩悶をして、自己の大切な生命の
道具である心や肉体をみだりに破壊するような価値のない事は些かなりとも行わな
い。
その結果、当然かの人々は一様に如何なる人生事情にも耐え得る様な積極的の心を
有し、その上頑健なる強壮味を肉体に具現して、矍鑠として齢を進め、よく長寿の幸
福を克ち得ている。
であるから、吾れ人と共に完全人生に活きるために、自己統御を正当に為し得る人
となるのには、その先決問題として、真正の自己=真我、というものを正しく信念し
得る自覚意識を確立するために、恒に心に合理的修練を施して常住霊的境地にその心
を活かすよう心がけねばならない。
そうすればやがて、自我の本質が、心よりも又肉体よりも超越した、よりもっと尊
い実在的のものであるという事が、意識の中に明瞭に自覚的に把握する事が出来るよ
うになる。
そしてこの自覚が現実化されるに従い、その人は「われ」なるものに対する信念
が、牢固として確立するので、自己統御も期せずして必然完全となり、そして更に一
層の精神訓練の功を積めば、いわゆる哲人覚者ともいうべき、神人一体の妙域に到達
した人ともなり得る。