さて次に必要な理解は、吾々の意識は、肉性意識、心性意識、霊性意識の、何れ
も、いわゆる実在意識と潜在意識の二つに分割されて存在しているという事柄であ
る。そして吾人の心理作用の九十パーセントまでは、この潜在意識の作用で行われて
いるということも記憶すべき大切な事なのである。
ところが兎角多くの人は精神活動の直接の衝に当たっているという関係から、実在
意識を潜在意識よりも重視して考える傾向がある。然しながら前述したように実在意
識の精神活動も単独に行われる場合は実際に於いて極めて稀なので、殆ど潜在意識の
作用から内的誘導を受けて行われているのである。たとえば何か考え事をするという
時、皮相的に観察すると実在意識だけで行っているようであるが、その実は潜在意識
の作用がその大部分を助成補修しているのである。それはこういうことに想到すると
すぐ分明すると思う。即ち吾々が何か難しい問題に直面し、一生懸命その解決の方法
を考えるのに専念しても、どうも適当の名案が心に浮かばないような時、いわゆる考
え疲れて一時その事柄を心から投げ出すか、でなければその時突発した他の用事など
に、心を応接せしめて、その事柄から心を離したと言うような場合、言い換えると全
然その事柄と心との関係が中断されている時、不図考えるともなく良い名案や正しい
判断などが心に浮かんでくるということは誰でもが実際に経験のある事と信ずる。
そしてこの現象は偏に潜在意識の作用に因由するものなのである。然し何分にも多
くの人はこの消息について全く無理解で、それをさえ、実在意識の作用のように考え
ている人すらある。
吾人が真に幸福を感じ得る理想的の人生に活きるのには、恒に潜在意識を正当に整
理して霊性意識発現の材料を多分にし、同時に霊性意識を出来得る限りより多く発現
して人生に活きるよう、その実際習練に努力すべきである。